私が建築設計に従事致しましてから、今年で二十八年、事務所を設立致しましてからは十五年になります。その間、たいへん多くの皆様方に支えていただきましたこと、感謝の気持ちでいっぱいでございます。
  社会の変動著しい昨今ですが、加えて十三年前にはあの阪神淡路大震災をも経験致しました。建物の倒壊により尊い人命がうしなわれてゆくという現実を目の当たりにし、改めて建物をつくるということの責任の重大さを感じ、その思いは今も強く心に刻みつづけております。建物が「強く」「安全」であることは当然のことと思われがちですが、しかしそれは、建築主、設計者、施工者のそれぞれが十分に責任を果たし協力して、はじめて万全となるものだと考えております。また「安全」には、他に有害な影響を与えないという意味も含まれております。事務所設立以来、人に有害な材料を排除し自然の素材にこだわった建築にも取り組んで参りました。さらに環境に対しては、省エネルギーや資源の再利用、建築の際のマイナスの負荷の低減も重要なテーマです。地球は人間のみならず、全ての生命にとっても大切です。地球が幸せでありつづけるためにも、地球に有害な影響を与えない建築という視点も常に持ち続けたいと考えています。私はこの強く安全な建築を「健全な建築」と称し、設計をする上での重要なテーマの一つとしております。
  もう一つ設計をする上でテーマとしているのが「心に響く建築」です。建築は人の心に様々な感覚を呼び起こすものです。「安らぎ」、「感動」、「懐かしさ」、「不思議さ」などなど。人の感覚と感情のバランスは微妙なもので、その空間や造形に直面することで、人の心は動きます。そういう意味でも建築の役割は重要です。すこしでも人の心がよい方向に動くよう、適所に「安らぎ」や「感動」が感じてもらえる空間づくりをしたいと思います。また、建築の社会的側面である景観においても、その土地の風土や歴史に配慮し、「その土地らしさ」と「美しさ」を感じてもらえるような建築にしたいと日々考えております。
この二つのテーマである「健全な建築」「心に響く建築」をつくりあげてゆくことが自分の生涯の使命と考え、また建築家という職業を天職と信じ、これからも日々精進してまいる所存です。

石 川 淳 朗
   
   
   
   
 

 

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