謹んで新春のお慶びを申し上げます。新しい1年が始まりました。
昨年は、新国立競技場の問題や杭の偽装問題など、建築を取り巻く問題が大きくクローズアップされた年でもありました。そのような社会情勢の中、「建築はどうあるべき」かという最も根本であり普遍のテーマについて、今一度、私自身も建築家の一人として、自分の考えを再確認することができたように思います。
阪神大震災を経験した私にとりまして、建物は安全でかつ安心できるものでなければならないということは、大いなる使命として肝に銘じております。そのためには、建築主、設計者、施工者のそれぞれが十分に責任を果たし協力して、はじめて万全となるものと考えております。また「安全」には、他に有害な影響を与えないという意味も含まれております。会社設立以来のポリシーとして、人に有害な材料を排除し自然の素材にこだわった建築をつくるべく取り組んで参りました。さらに環境に対しては、省エネルギーや資源の再利用、建築の際のマイナスの負荷の低減も重要なテーマです。地球は人間のみならず、全ての生命にとっても大切です。地球が幸せでありつづけるためにも、地球に有害な影響を与えない建築という視点も常に持ち続けたいと考えています。そして、建築の社会的側面である景観においても、その土地の風土や歴史に配慮し、「その土地らしさ」と「美しさ」を感じてもらえるような建築にしたいと日々考えております。

また、私がもう一つのテーマとして大切にしているのが、既存の建物を最大限に活かし、大切に守っていくということです。私は現在、商業複合ビルのコーディネーターをさせていただいております。建物は完成して終わりではなく、建物を守っていくためにメンテナンスが重要です。一言にメンテナンスといっても、機能、美観、資産面から総合的に判断し、保守をしていく必要があります。そのためには優先順位を決定し、予算、省エネ、ランニングコストを考慮しながら最善の計画、仕様を考え、コーディネートしてゆかなければなりません。私は、専門家としての立場から、大規模な修繕だけではなく、日常的な修繕や更新、また管理業務に関することも含め総合的にコーディネートをしております。建物の価値を保全し寿命を延ばしていくことは、建築家として大変やりがいのある仕事であると感じ取り組んでおります。
本年も感謝の気持ちを大切に、日々一歩ずつ精進して参りたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。